インタビュー映画

真利子哲也監督の語る映画「ディストラクション・ベイビーズ」の生成のきっかけ

真利子哲也インタビュー

先日情報収集のために本屋さんに行ったところ、面白い本を見つけた。「映画の言葉を聞く」(フィルムアート社 2018年)という本だ。

映画の言葉を聞く
映画の言葉を聞く 早稲田大学「マスターズ・オブ・シネマ」講義録

早稲田大学で行われている「マスターズ・オブ・シネマ」という講義の、2016年度、2017年度に行われたものの記録である。この講義は、「映画・映像のプロフェッショナルの声に耳を傾け」るという内容のようだ。趣旨について大変含蓄のある言葉があるのでまず引用する。

表現をめぐってその見方を自身で形成すること、そのためにはノウハウといった観点だけで物事を理解するのではなく、他者の言葉に耳を傾け、未知を好奇心に変え自己と他者のイメージをたえず更新し続ける姿勢こそが、この分野を学ぶために肝要だと私たちが考えるからである。(P8 編著者言)

この本には30弱の多くの講義の記録が収録されており、大変読み応えがある(分厚いです)。
少しずつ紹介していこうと思う。

1つ目として、真利子哲也監督の講義(インタビュー)を取り上げたい。
2016年「ディストラクション・ベイビーズ」でロカルノ国際映画祭などで賞を獲得し、2018年に放映されたドラマ「宮本から君へ」の脚本・監督も務めた真利子監督。

本にはおそらく90分の講義のダイジェストというような形で映画監督になるまでの経緯や作品についての対話が記録されている。

前述したように賞を受賞して話題になった「ディストラクション・ベイビーズ」なのだが、制作の発端は意外にあっさりとしている。話を聞いている限り、誤解を恐れずにいうと「ひょんなことから」という感じだ。

 この映画は松山での取材に基づいていて、実際に十代の頃に喧嘩に明け暮れていた人の話を聞くことから生まれた作品です。彼に会って、僕自身も「頭の中で喧嘩のことしか考えていない人なんているのか」と驚きつつ、惹かれてしまったんです。(P107)

どうして松山に行ったのか、何か必然があったのかはここでは語られていないので分からないのだが、この何気ない発端の感じが非常に面白い。造る人の言葉の面白さ、作品が生まれる瞬間の面白さである。
神話の話で、神様の中には例えば泡から生まれたというのもあったりするが、そういう感じに近いとふと思った。

また、「仕事としての映画制作」という側面についてもリアルな話を披露してくれている。

 東京藝大の大学院に入ったのは二十五歳のときだったのですが、それまで自分がつくった8ミリ作品は、スタッフもなしに自分一人で撮って自分ひとりが出ている作品でした。自分の作品をセレクションしてくれた映画祭などに行くと、映画学校でつくられたほかの作品を見たり、その監督と会ったりする機会ができた。すると、どうも映画学校ではチームワークで映画をつくるらしいと知って、確かにそうじゃないと持続は難しいなと思った。モノゴトを知らなかったので、簡単に言ってみれば仲間作りのために進学しました。(P100)

音楽などでは一人で作るというのは90年代くらいから宅録で楽曲を制作する人が出てきたりしていましたし今でもそういうアーチストがいると思うのですが、映画はなかなかそういう訳にもいかないのですね。確かに映画はほかのカルチャーコンテンツに比べて様々な要素が入っているので、専門家が集まらないとできないんだなあ、という風に感じました。
映画を自分が思うように自由に撮り始めてそしてだんだん広い世界に出るようになって、実際の映画の作り方に目覚めていく様子がとてもリアルに聞けて非常に貴重なトーク。
個人的には前述した映画のタイトルのカタカナ「ディストラクション」というダブルミーニング(destruction(破壊)とdistraction(気晴らし))なところについて深く話を聞いてみたいなと思いました。

 

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