インタビュー映画

映画は撮ったことがない  神山健治(2)

神山健治インタビュー

前回に続いて「映画は撮ったことがない」から個人的に印象に残った「造る人の言葉」を引用して紹介したいと思います。
この本は映画監督や脚本家、映画制作者を志望する人に向けた具体的なアドバイスや参考になる情報に溢れています。つまり、どうやって「造る人」になるか、という話ですね。
今回ここに引用するのは、あこがれる/目標にする映画監督がいたときに、その人の演出手法をどのように学んで自分のものにするか、ということに関する具体的な方法です。

 

 

—-どうやったら作り手の思考をプロファイルできますか?ただ作品を見るだけでいいんでしょうか?
神山 最近はあまり流行らないかもしれないけれど、昔は映画館の中で大学ノート広げて、セリフなどを筆記している人がいましたよね。ああいうのは、すごく勉強になると思いますよ。僕も一度、脚本家志望のヤツに『S.A.C.』の中のどれでもいいから一話を、脚本にしてごらん、とアドバイスしたことがありますよ。その時の彼は何を思ったのか、DVDを止めながら一字一句そのまま文字起こししてきましたけどね(笑)。それは僕のいったこととはちょっと違ったけれど、あれはあれで勉強になったと思うよ。
—-自主的に演出を勉強しようと思ったら、自力でいろいろできるということですね。
神山 そうなんですよ。でもそうやって覚えたことを、現場の中で演出していく上で「正しい」と証明するのは、次の段階なんですよ。そこで「正しければ受け入れてくれるはず」なんて変な夢を抱くと苦しいから、一番苦しい現実の話を連載で書いたんです。(P205-206)

 

 

音楽の世界では「完全コピー」という手法がありますね。書道だと臨書という手法が該当するでしょうか、絵画でも模写というのがありますね。それらに近い手法かなと思います。「学ぶは真似ぶ(まねする)から」という有名な言葉がありますが、まずはまねするところから始めると、映画の演出方法においても何かがつかめる、ということなんですね。個人的にはすごい発見です(自分は映画はまったく制作したことがないので。動画の編集すらありません)。ちなみに神山さんが引用の中で笑いながら言っているところは、想像ですがセリフ以外の要素(映像や場面についてなど)も書き留めて脚本にしてみろ、ということかなと思います。

(ブログ担当Pが)この箇所を読んだときに個人的に思った(自分の経験と照らして共感した)のは、「現場における情報の豊かさ」ですね。
現場、あるいは現物、に存在する情報というのは膨大で、もちろんおおまかに把握することは一瞬でもできる(ああ、これは近未来でありながらリアリティを追求したストーリーでしょ、みたいに)。人間の把握力というのはその意味では優れていると思う(一目ぼれなんていうのもその部類なんじゃないですかね。一瞬で好みかどうかを判定する)。でもその対象となるもののそばに行き、長い時間たたずんだり、目を皿のようにしたり、一からすべて指さして数えあげたり、できれば統計をとったり、あちこちに近づいてじっと見たり、許されるなら叩いたり刺激を加えたりすると、そこに最初は見えなかった無数の発見がある。それは自分が普段広告コミュニケーション関連でマーケティングやプロモーションの仕事などをしているときによく気づかされることでもあります。
例えばマーケティングでいう現場は、商品の売り場とか、消費者が商品を使っている場、のことを言います。お店に売っているものであれば売り場に足を運ぶ。買ったことがない類のものであれば、真剣に買うつもりでその場で検討してみる。店員さんに相談してみる。また、それを普段使っている人が使っている様子を見る。その人にいろいろ質問をしてみる。そうすると、必ず現場に行く前の予断とは異なる気づきがあります。それがヒントになって、自分たちなりのマーケティングコミュニケーションのアイデアが浮かんでくる。

小学校から高校の間って、意外に現場を重視することを学校が要請していなかった気がします。大学になると修める学問によっては重視すると思うのですが、幼少期から10代にかけて、現場というのは総じてあまり重要ではなかった(せいぜい小学校の理科、社会の一部の時間くらい?)気がします。受験勉強が始まってしまうと、紙の上で行われる準備がほぼすべてで、受験勉強のために野原に行って植物や虫を観察したり町に出てインタビューしたりなんてしないですしね。でも社会人になると、もちろん紙の上のものも大事なんですが、自分の実感としては現場ではじめて得られるものの重要度とは比べ物にならない世界になる。

また、特に、「造る仕事」というのは現場にはりつくということであり、そこから得たものというのはこうやって本当に共有してもらうと面白いですね。

若干抽象的な話も入ってしまいましたが、仕事の経験から得たPの気づきの話はまた具体例を整理して用意して改めてしますね。(このブログの本筋ではないので様子を見て・・・)

 

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